我が家の書棚を紹介します(後編)|第10回 黒田研二 エッセイ

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 来る日も来る日も雨、雨、雨。
 じめじめしたイヤぁな毎日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 さて。僕、自宅のトイレに書棚を設置し、新しく買った本はすべてそこへ置くようにしているんですけど、先日たまたま観たテレビ番組で、トイレに本を置くことは風水的に見てサイアクだとかおっしゃってまして……あらららら。
 うーん。そういわれても、あれだけの本をほかの場所に移動させるのは我が家のスペースからしてちょっと無理だもんなあ。トイレに本を置いたままでも運気が逃げていかないアイデア、なにかないでしょうか? 風水に詳しい皆様、教えていただけると幸いです。
 さてさて。トイレの書棚……ではなく、実家の書棚を紹介するこのシリーズも3回目。今回は書棚を眺めながら、僕の半生を振り返ってみたいと思います。

<編集者注:以下、画像クリックで拡大します>


まずはこちら――〈しらうお〉第22号(1986年版)。

 僕の母校である三重県立桑名高等学校の生徒自治会が年に1回発行している冊子です。
 生徒たちから原稿を募集して、クラス紹介、部活紹介、行事レポートなど幅広く掲載。数年前に、「卒業生からひとことお願いします」と原稿を依頼されたことがあったので、おそらく今もまだ継続して発行されているものだと思われます。
 ポエム、エッセイ、小説なども投稿オッケーで、実にバラエティーに富んだ冊子でした。
 幼い頃から文章を書くのが大好きだった僕が、こんな楽しいものに参加しないわけがありません。毎年、率先していろんな文章を書き綴ってきましたが、とはいえ、小説を投稿することにはかなりのためらいがありました。
 当時、下ネタ満載のおちゃらけた物語をみんなに披露することはあっても、真面目に書いたものなど、こっぱずかしくて誰にも見せたことなどありませんでしたから。
 だけど、活字になった自分の小説を見てみたい。いや、なによりも自分の小説がどんなふうに評価されるのか知りたい――そんな思いもあって、高校二年生のときに原稿用紙三十枚ほどの短編小説を投稿しました。


「海が見たくなる季節」

 初めて活字になった僕の作品です。作者名は《がちゃぴん=むっく》(笑)。自分の作品だとみんなに知られるのが恥ずかしくて、ペンネームを使いました。
 内容はと申しますと……人生に嫌気がさし、海で入水自殺を図ろうとした青年の物語。心の闇を描いた暗いお話かと思いきや、終盤、自我を持った海と大地がバトルを始めるという予想外の展開に度肝を抜かれること間違いありません。何十年ぶりかで読み返してみましたけど、なんというか……純文学を目指した結果、よくわからないファンタジーになってしまった感じがものすごく伝わってきて、ある意味めちゃくちゃ面白かったです。
 現在、note(https://note.com/kuroken01)で昔書いた作品を随時アップしていますので、この作品もいつか皆様のもとに届くことがあるかもしれません。そのときを楽しみにお待ちください。
 自分の書いた小説が初めて活字になったのは高校二年生の3月のこと。そして、初めて小説の新人賞に応募したのは、それから約一年後のことでした。はっきりとは覚えていませんが、「海が見たくなる季節」が活字になったことで、僕の「作家になりたい!」という夢は、さらに本気度を増したのかもしれません。


〈小説推理〉1988年7月号


「第10回小説推理新人賞中間発表」

 初めて新人賞に投稿した作品は「π(パイ)の悲劇」。暗号もののミステリでした。
 一次予選通過者の中に自分の名前を見つけたときは嬉しかったなあ。よく見ると、篠田節子さんや姉小路祐さんのお名前もあって驚きます。
 予選を通過して気をよくした僕は、毎年「小説推理新人賞」に応募するようになりました。次第に、一次予選だけでなく、二次予選を通過することも増え、ついに最終候補まで残ったのは大学五年生のとき(一年留年しちゃったので)。


〈小説推理〉1992年8月号


「第14回小説推理新人賞発表」

 このときに受賞したのは浅黄斑さんでした。そして最終候補の中にはなんと横山秀夫さんのお名前も! 黒田研二と横山秀夫の名前が並ぶことなんて、おそらくこの先絶対にないでしょうね。


僕の応募作「5人プラスひとり」の評。胡桃沢耕史さんにボロカスにいわれてます(笑)。

 「5人プラスひとり」というタイトルにピンときたかたは、相当な黒田研二マニアに違いありません。この短編、実は『ペルソナ探偵』の原型だったりします。
 最終候補作に残ったことがさらなる励みとなり、その後も投稿を続け……結局、「小説推理新人賞」を獲ることはできませんでしたが、作家になる夢は叶って今日に至っております。
 「小説推理新人賞」だけでなく、ほかにもいくつかの新人賞に応募していました。僕の名前が掲載された古い雑誌は今でもすべて残してあります。
 デビュー以前の思い出が詰まった書棚は、見返すと楽しいですね。僕の名前が載っているわけではありませんが、こんな雑誌も並んでいます。


〈ショートショートランド〉

 中学時代、星新一にはまった僕が定期購読していたショートショート専門誌。講談社の名編集者だった宇山日出臣さんが作っていた雑誌でした。
 その後、宇山さんの仕掛けた新本格ミステリブームにはまり、宇山さんが編集長を務める雑誌〈メフィスト〉の新人賞でデビューしたのですから、なんとも不思議な縁です。
 太田忠司さんや岡嶋二人さんを知ったのも、この雑誌がきっかけだったと思います。〈ショートショートランド〉も定期的に作品を募集していて、僕も必ず投稿していたのですが、こちらはまったくかすりもしませんでした。どうやら僕に、ショートショートの才能はなかったみたいです。

 作家デビューして今年で20年。漫画原作も含めると、これまでに50冊以上の本を出してきました。僕の著作が並んだ棚は、僕の歴史そのものだったりします。まだまだこれから、二倍にも三倍にも増やしていきますよー!


こちらは「青鬼」棚。そろそろ収まりきらなくなってきました。


「逆転裁判」棚。ありがたいことに、いろいろな国で出版されたので、種類もたくさんあります。


有栖川有栖さんと綾辻行人さんに推薦文をいただいたこの書店用ポップは一生涯の宝物です。

 我が家の書棚については、まだまだ書きたいことがたくさんあります。仕事部屋にある書棚も紹介したいのですが……でも、このエッセイのメインテーマは《古書店探訪》。次回からは通常営業。日本各地の個性的な古書店を紹介していくスタイルに戻したいと思います。我が家の書棚ネタは、またいつか古書店への取材が滞ったときのためにとっておきますね。
 というわけで、ひさしぶりに古書店を巡ってきましたよ! 楽しかったあ。やっぱり古書店探訪はサイコーです。次回は大阪のオモシロ古書店をご紹介。お楽しみに。


《今月のくろけん》
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