古書の隣にあったものとは?~福岡・LUMO BOOKS&WORKS~|第3回 黒田研二 エッセイ

 皆さま、一ヵ月ぶりのご無沙汰です。
 先月の仙台に続いて、今回は福岡に行ってまいりました。遠征したときはやはり、古書店巡りをしなくちゃもったいない。というわけで、もつ鍋やラーメンを食べ歩きつつ、博多駅周辺の古書店にふらりと立ち寄った次第。
 ネット検索して見つかった古書店を片っ端から訪ねてみたのですが、閉店したお店のなんと多いことか。たとえば「バンドワゴン」という名前の古書店。Googleマップで調べると、位置と店舗情報がひととおり出てくるのですが、実際にその場所へ行ってみてもスーパーしかありません。「古書……どこ? おーい、こーしょこしょこしょ……こーしょこしょこしょこしょ……」とひとり呟きながら、スーパーの周りをうろつく姿は、完全に危険なおやぢです。たぶん、通報されてもおかしくなかったでしょう。
 このままでは埒が明かないと思い、スーパーの店員さんに「あの……バンドワゴンって知りませんか?」と訪ねたところ、防虫剤コーナーに連れていかれました。それはバンドワゴンじゃなくてタンスにゴンだ、馬鹿野郎。嘘です。話を盛りました。ごめんなさい。
 僕の馬鹿話はさておき。手に入れたい本にある程度目星をつけている場合、BOOKOFFなどの新古書店は確かにお得で便利なんですけど、その勢いに押されてしまって、予期せぬ掘り出しものとの出会いが数多く転がっている古書店が消えていくのは実に悲しいことであります。
 さて。福岡の街をあちこち歩き回り、ようやく見つけた最初の古書店がこちら。


「入江書店」

 古くて味のある専門書が並ぶ本棚にタスキをかけるおばあちゃん。店の奥には品のよさそうなおじいちゃんが座っていて、「これぞ古本屋!」と叫びたくなるくらい、万人が抱く古書店イメージそのままのお店。
 厳しい競争に勝ち残っていくのはこういう昔ながらの古書店なのかなあと思いつつ、次の古書店を訪ねたら、こちらはまったく違う感じのお店でした。というわけで、今回皆様にご紹介するのはこの古書店であります。


「LUMO BOOKS&WORKS」


歩道に立てかけられた黒板を見ただけでワクワク♪。


ビルの階段を上って2階へ。奥はギャラリーになっていて、手前のドアが古書店に通じています。

 どんなお店なんだろう? ドキドキしながら店内に入ってみると……。


ををっ!

 天井からぶら下がったライト、木製の本棚、中央に置かれたテーブルとその上にセンスよく並べられた古書……目に入るものすべてがものすごくオシャレ。店内の雰囲気は古書店というよりも若い女の子たちが集まる都会の雑貨屋みたい。棚を眺めているだけで、齢50のおやぢも乙女みたいにウキウキしてきちゃいます。


をををっ!

 しかもこのお店、本のジャンル分けがとてもユニーク。〈想〉〈旅〉〈食〉〈創〉〈人〉〈世界〉〈文化〉〈エロス〉など、ほかではあまり見かけない――だけどとてもわかりやすい言葉で区分されているんですよね。この独特なスタイルがさらにオシャレを増幅させてます。


ををををっ!

 もっともたくさんのスペースが割かれていたのは〈奇〉のコーナー。『やはりキリストは宇宙人だった』『謎の雪男 追跡!』『やはりETはいた!』など、タイトルを眺めているだけで楽しくなってきちゃう本がズラリ。


〈奇〉のコーナーにはオカルトだけでなく犯罪関連の本も。




イラスト付きの手作りポップも秀逸。どの本も思わず手に取ってみたくなっちゃいます。

 陳列された商品にはたいてい、その店の店長さんの趣味が色濃く表れるもの。『世界拷問史』、『世にも奇妙な人体実験の歴史』、『診断名サイコパス』と見るからにヤバそうな本が並んでおり、ここの店長は偏屈で変わり者のおじさんか? と思っていたら、なんととても気さくで魅力的な女性のかたでした。なるほど。店全体がオシャレな雰囲気なのも頷けます。


映画化された作品のDVDとその原作が並べられたこんなコーナーも。

 店内はそれほど広くはありませんが、様々なジャンルの本が興味をそそるポップと共に所狭しと並べられていて、あっという間に時間が過ぎ去ってしまう――そんな空間でした。
 いや、魅力はそれだけで終わりません。この古書店の最大の特徴がこちら。


古書店なのに……石?

 陳列されているものが本だけじゃないんですよね。鉱物や化石の並べられたコーナーまであって、それが実に神秘的で、ついつい魅入ってしまいます。
 古書と鉱物・化石。一見ミスマッチに思えますが、よくよく考えてみると、古書ってどことなく化石に似てますよね。積み重なった本は上に行くほど新しくてまるで地層みたいだし、根気よく底のほうを調べていくと、思いがけない宝物が眠っていたりもするし。発掘すれば発掘するだけ、今まで知らなかった昔の時代が見えてきたりも。これらの展示物もすべて、店長さんの好みで並べられているんだそうです。
 昔ながらの古書店もよいけれど、やはりどこか入りづらい雰囲気があるのも事実。このお店みたいに若い女性が気軽に立ち寄れるオシャレな雰囲気を作り出すのも、古書店が生き残っていくひとつの手段なのかもしれません。ただ古書を売買するだけでなくプラスアルファの魅力で客を惹きつける――これからはそんな古書店が増えていくのかも。
 今回は時間の関係でお邪魔できませんでしたが、旅関連の古書ばかりを集めた「ひとつ星」、絵本や児童書が中心の「みかづき」など、福岡市内には他店との差別化を図った個性的な古書店がまだいくつかあるみたいなので、機会を見つけて訪ねてみたいと思います。

 まったくの余談ですが、今回お邪魔した古書店のすぐ近くには、〈警固交番〉という名前の派出所がありました。このあたりの地名が〈警固(けご)〉なのでそのように名づけられたのでしょうが、字面を見るだけでかなりの威圧感。ここでは絶対に悪さなどできないなと、身が引き締まる思いでした。


交番の写真はさすがに撮れなかったので、交差点をパチリ。

 仙台に続き、福岡も充実した古書店巡りとなりました。さーて、次はどこの古書店にお邪魔しようかな?

《今回、お世話になった古書店さま》
 LUMO BOOKS&WORKS
 年中無休 12:00~20:00


《今月のくろけん》
 11月21日に『青鬼 ゾンビだらけの遊園地』(PHPジュニアノベル)が発売されます。小中学生向けの青鬼シリーズ第5弾。大人でも楽しめますので、ぜひ青鬼との知恵くらべを楽しんでみてください。

黒田研二

黒田研二(くろだ・けんじ)
作家。出版社勤務を経て、2000年『ウェディング・ドレス』(講談社)で第16回メフィスト賞を受賞してデビュー。主な著作は『今日を忘れた明日の僕へ』(原書房)、『カンニング少女』『キュート&ニート』(以上文藝春秋)など。近年は『逆転裁判』『逆転検事』のコミカライズ(講談社)、『真かまいたちの夜』のメインシナリオ、『青鬼』のノベライズ(PHP研究所)など、ゲーム関連の仕事が中心。得意なスポーツは水泳、スキー。好きなものは柴犬、アイドル。
Twitter:https://twitter.com/kuroken01

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