『21世紀本格ミステリ映像大全』執筆のこと(羽住典子)第5回 千澤のり子 エッセイ

21世紀世界本格ミステリ大全

(千澤のり子先生は「羽住典子」先生名義でミステリ評論活動を行っております。
この度「羽住典子」先生名義でご執筆された掲題の書籍(本日2018年3月16日発売!)について、出来たてホヤホヤのエッセイをご寄稿頂きました。執筆のご苦労話や思い出話など、皆様是非お楽しみ下さい。/古書店三月兎之杜より)


 千街晶之編著『21世紀本格ミステリ映像大全』(原書房)が刊行されました。

 タイトルのとおり、二十一世紀に発表された本格ミステリ映像作品のほとんどを取り上げている作品です。私は羽住典子名義で、二時間ドラマに関するコラム、国内ドラマ・海外ドラマ・アニメ・邦画・洋画のレビューのごく一部を執筆しています。ほかの執筆者は、秋好亮平さん、大倉崇裕さん、大矢博子さん、不来方優亜さん、末國善巳さん、蔓葉信博さん、三津田信三さんです。とっても豪華です。
 担当した本数は少ないですが、一つの作品の中に入っている話が多く、とても、とても、ほんとにとても大変な作業でした。二十世紀から続いている作品や、完結していない作品もあります。ワンシーズンで終わらず、続編があり、さらに映画に続くという作品も担当しました。
 もともと映像は大好きなので、大半はリアルタイムで観ている作品ばかりです。でも、まさか仕事になるなんて思っていなかったので、よほど思い入れの強い作品以外は、はっきりと記憶に残っていませんでした。
 なので、どの作品を書くのか決まってから、少しずつ再視聴して、原稿もマイペースに進めていました。それが、だんだん担当本数が増え、12月後半から予定の大半をキャンセルし、家からも出られなくなってしまいました。年末年始もありませんでした。
 ほかにも、仕事は抱えています。このままではいけないと、有料配信サービスで観られる作品は配信に切り替え、乗り物移動や家事の合間、お風呂の時間もiPhoneを片手に動画を観ていました。
 それだけ大変な思いをしても、編著者である千街晶之さんの執筆量にはまったく及ばず。なんてったって、収録レビュー250タイトルのうち、半分以上を一人で書かれているのですから。
 どの人にも時間は平等に流れているはずなのに、なぜ自分はそこまでできないのかと、全てが終わった後に落ち込みました。でも、今は、オリンピック中継で羽生結弦選手の演技を見て人間じゃないと思ったように、きっと千街さんも人間ではないのでしょうと結論付けています。
 自分の限界を超える量を引き受けてしまったのは、理由があります。
 今から20年以上前のことです。山口雅也監修、千街晶之・福井健太編『ニューウェイブ・ミステリ読本』に出会い、なんてすごい人がこの世にいるのだと感動し、千街さんも所属している探偵小説研究会編『本格ミステリ・ベスト10〈’98〉』でミステリ評論家という存在に憧れるようになりました。このくらいの時期から、この人と同じ本を読みたいと千街さんの名前を意識して探し、いつかお目にかかりたいとまで思っていたのです。画像のように『ニューウェイブ・ミステリ読本』はボロボロになってしまいましたが、すぐに手に取れる場所に置いています。

ニューウエイヴ・ミステリ読本
 それからいろいろありまして、探偵小説研究会に入会してから早くも10年以上が過ぎています。自分が活字で一方的に知っていた、ほかの評論家の皆さんにも出会い、現在一緒に仕事をしているのは不思議に思います。
 かなり慣れましたが、ときどき、千街さんとお話をすると、私は20代前半の自分に戻ってしまいます。自分もその中にいるはずなのに、世界が眩しく見えます(本記事を書いていて気が付いたのですが、千街さんは拙作『君が見つけた星座』(原書房)の中村先輩に似ています。きっと、無意識で表現したのでしょう)。
 だから、どんなに無茶振りをされても、「このヒト◯ロシ!」「天然鬼畜!」という悪態はつきませんでした(さすがに口が悪いですが、それだけ大変だったのです)。「もう無理ですー」と言いながらも、結局、引き受けました。そのぶん、私も千街さんに相当のご迷惑をおかけしたので、お互いさまになるのでしょうか。未熟な自分をとても反省する経験もしました。
これだけの作品数があるなら、一本は観たことがあるという方は、きっと少なくないと思います。願わくば、こんな作品があったよね、この作品は観てみたいなあと話題のきっかけになり、「まだまだこんな面白い作品があったんだ!」と多くの方が喜んでいただけますように。


『幻視者のリアル (幻想ミステリの世界観)』(千街晶之著/東京創元社/2011年)に記された献呈書名。

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