アパートの一室が古書店に~名古屋・甘露(アムリタ)~|第13回 黒田研二 エッセイ

 GoToトラベルが全国で始まり、僕もひさしぶりに仕事で東京へ。
 上京したら絶対に行きたいスポットがあったので、用事を終えたところでソッコー向かいましたよ。……え? どこへ出かけたかって? ここです!


マーチエキュート神田万世橋。

 このエッセイの第11回でも紹介した謎解きゲーム「古書店まんせい堂奇譚」をプレイしにやって来ました。


こちらが謎解きキット。

 これは楽しい! 大正時代の万世橋駅を舞台に、古書を題材にした小説(これも古書という設定)を読みながら、幻の古書を探し出す、という隅から隅まで古書尽くしの謎解きであります。
 かつて万世橋駅だった場所を歩き回りながら、四編の短編小説を楽しみつつ、物語の奥に秘められた謎を解き明かしていくこのイベント。古書好きのあなたなら絶対に夢中になるはずです。僕はお昼ご飯を食べるのも忘れて、ひたすらプレイし続けちゃいました。幻の古書が目の前に出現する瞬間はめちゃくちゃ感動しますよ!

 さてさて、謎解きのお話はこれくらいにして、今月の古書店をご紹介。
 今回ご紹介するのは、名古屋にあるこちらのお店。


「覚王山アパート」

 ……え? アパート?
 そうなんです。築四十八年の木造アパートを改築して造られた建物の中には、アクセサリーショップや手芸用品店、画廊など、ハンドメイド中心のお店が並んでいます。


外壁に貼りつけられたお店の表札。建物の中に入る前から、早くも個性がうかがえます。


昭和の雰囲気漂う門扉。


レトロ感がたまりません。


玄関口。ここも味があります。

 アパートだった頃の状態をそのまま保存してあるので、玄関のとびらを開けると、目の前に広がるのは昔懐かしいコンクリート製の三和土(タタキ)。……ではありますが、建物内は靴を履いて歩き回ることができます。
 アパートの中に入って、すぐ右手に見えるのが、今回ご紹介する古書店です。


「甘露(アムリタ)」

 アムリタはサンスクリット語。インド神話に登場する飲料の名前で、これを飲むと不老不死になれるのだとか。


カフェも併設。ドリンクも数多く用意されていますが、この中にアムリタは存在するのでしょうか?

 店内に入ると、ひげのマスターが出迎えてくれました。カレーとチャイがオススメということで、早速注文。
 カレーができあがるまで、書棚に並んだ古書を物色して待つことにしました。


様々な大きさの書棚があちこちに。無造作に積み重なっているように見えて、ものすごくスタイリッシュ。


あちこちに飾られた人形が、これまたすごくオシャレ。


店内ではかわいらしいマスクや絵はがきも販売されています。……あ。店長の似顔絵、発見。


こちらにも店長が。このイラストどおりの朗らかなおかたです。


店の外にも古書が並んでいます。

 古書を眺めているうちに、本格的なインドカレーが運ばれてきました。スパイシーな香りが食欲をそそります。


 本日のカレー。

 ひと口食べて唸りました。これは旨いっ! 食べた瞬間はピリリとした辛みを感じるのですが、しかし豆の甘さが絡み合うからなのか、刺激がいつまでも舌に残りません。
 トッピングのキュウリにつけられた味噌(?)も絶品。辛いけれどもしつこくなくて、ヤミツキになる美味しさ。これなら何杯でも食べられちゃいそうです。


 食後のチャイ。

 このチャイがまた美味しくって。ほっとする甘さに心がほんわり。チャイを飲みながら、古書の背表紙を眺める至福のひととき。ものすごく贅沢な気分を味わえますよ。


お水の入ったポットも独特なデザインで、ちょっとばかり海外旅行気分に浸ることもできます。

 昭和の雰囲気あふれるアパートの一室で、古書に囲まれながら、本格的インドカレーとチャイまで食べられちゃう希有な体験。
 いやあ、あの豆カレー、本当に美味しかったなあ。この原稿を書いていたら、また食べたくなっちゃいました。絶品カレー、マジでオススメです。


古書店を堪能したあとは、ほかのお店も見て回りました。若い女の子が好きそうな可愛らしいハンドメイド商品がいっぱい。


こちらは裏口。

 古書店街を歩き回るのって、気力も体力もけっこう消耗しますよね。ウィンドウショッピングもまた然り。
 でも、覚王山アパートは建物全体が癒やしの空気に包まれているのか、逆に疲れがとれていくような感覚にとらわれます。
 日常の喧噪を離れて、ゆっくりくつろぎたいかたはぜひ一度、覚王山アパートへお越しください。
 古書に囲まれながら、美味しいカレーを食べれば、リフレッシュできること間違いありませんよ。

《今回、お世話になった古書店さま》
 甘露(アムリタ)
 火・水定休 11:00~18:00
 愛知県名古屋市千種区山門町1丁目13覚王山アパート1 階
 http://kzapt.nagoya/


《今月のくろけん》
 青鬼のスピンオフシリーズ『青鬼調査クラブ』(波摘さん著)の3巻が発売されました。シリーズ累計90万部突破です。夢の100万部も間近。引き続き、応援をよろしくお願いいたします。https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-78953-8

黒田研二

黒田研二(くろだ・けんじ)
作家。出版社勤務を経て、2000年『ウェディング・ドレス』(講談社)で第16回メフィスト賞を受賞してデビュー。主な著作は『今日を忘れた明日の僕へ』(原書房)、『カンニング少女』『キュート&ニート』(以上文藝春秋)など。近年は『逆転裁判』『逆転検事』のコミカライズ(講談社)、『真かまいたちの夜』のメインシナリオ、『青鬼』のノベライズ(PHP研究所)など、ゲーム関連の仕事が中心。得意なスポーツは水泳、スキー。好きなものは柴犬、アイドル。
Twitter:https://twitter.com/kuroken01

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