大自然の中でのんびりと~恵那・庭文庫~|第14回 黒田研二 エッセイ

 皆さん、こんにちは。
 先月の更新をサボったところ、一気に季節が秋から冬へと変わってしまいました。
 再び、新型コロナウィルスが猛威をふるい始め、なんとも息苦しい年末となってしまいましたが、いつか必ずやって来る夜明けを期待しつつ、心と身体のケアをしながら、この困難をみんなで乗り越えていきましょう。
 たまにはせわしい都会を離れ、大自然の中でのんびり休息をとったりするのもよいのでは? こんな時期に旅行なんてけしからん! と思われるかたもいらっしゃるかもしれませんが、密集を避け、衛生面への気遣いを忘れなければ、僕は別段問題ないかなと考えております。
 というわけで、今回は、密集とは縁遠い岐阜の田舎町にある、リラクゼーション効果たっぷりの古書店をご紹介!

 
岐阜県恵那市へ。

 中央自動車道恵那インターを下りて北へ北へ。しばらく車を走らせると、木曽川が見えてきました。
 出かけたのは11月中旬。この日はあいにくの雨模様。晴れていたら、もっと素晴らしい景色が見えたのかもしれません。もう少し早い時期に来ていたら、紅葉も見られたのでしょうか?


笠置峡

 木曽川沿いを進むと、美しい渓谷が。曇り空と薄い霧が独特の雰囲気を醸し出していました。晴れた日も素晴らしいのでしょうが、これはこれで情緒があります。
 ……いやあ、キレイだなあ。
 車を停めて、しばしのんびり。……いや、今日はドライブを楽しみに来たわけじゃなかった。目的地へ向かわなければ。
 しかし、周囲に見えるのは山と川だけ。こんなところに本当に古書店が存在するのでしょうか?


笠置峡からさらに1キロほど進んだ地点で、ついにお店の看板を発見!


え? ここをのぼるの?

 車1台がようやく通れるくらいの幅しかない急な坂道。もし道を間違えていたら、方向転換不可能。不安を募らせながら、道の奥へ。
 ……実は、先ほどの看板をよく見ると、《車はかわいやさんの駐車場へ》って書いてあるんですよね。かわいやさんは看板の奥に見えるたい焼きやソフトクリームを売っているお店。車はそこに停めて、坂道は歩かなくてはいけなかったみたい。ちゃんと看板を読んでなくてすみません(反省)。


坂道をのぼると……お、建物が見えてきました。


古民家に到着。……ここ?


ここでした!

 これはすごい。古民家一軒がまるまる古書店! 一体、中はどうなってるんだろう? ワクワクしながら建物の中へと入ります。


昔懐かしい三和土がそのまま残された入口。

 カゴの中の柚子から漂う甘酸っぱい香り。立てかけられたギター。そしてカウンターの向こうに積み上げられたたくさんの古書。期待に胸をふくらませながら、建物の奥へと進みます。


うわあ♪

 思わず感嘆の声が漏れちゃいましたよ。
 もともとの古民家にはほとんど手を加えず、上手に机や棚を配置した結果、めちゃくちゃ本が好きな人の家みたいになっとります。
 昔ながらのストーブや照明も味があって温かい。これは落ち着きますね。


子供向けの古書が並んだ和室。座布団も置いてあって、思いきりくつろげそう。


丁寧にジャンル分けされているので、目当ての本も探しやすい。古い柱に直接記された文字も味があります。


音楽関係の古書はレコードプレイヤーの下に。


畳の部屋はやっぱり落ち着きますね。自分が日本人であることを再認識。

 とにかく広い店内。……いや、店内という呼びかたはあまりしっくりきません。ここは店じゃなくて、家と呼ぶのがふさわしいかも。
 コーヒーを飲みながら、寝転びながら……田舎のおばあちゃんの家へ遊びにやってきた子供みたいな気分で、自由気ままに古書を楽しむことができます。
 ただ古書が並んでいるだけでなく、店主さんのアイデアによる企画棚もあちこちに。


店主さんのラブコールで再版された本『文化のなかの野性』(現代思潮社)を1000冊売ろうというキャンペーン。並々ならぬ熱意が伝わってきます。


「毎日が何だか嫌になった人におすすめの6冊」――癒しの空気が充満したこの場所で読めば、きっと元気になれるのでは? そんな気にさせられます。


こちらはTwitterのフォロワーさんたちのお薦め本を集めた棚。


テーマに沿った本を集めたコーナーもありました。このときのテーマは「茄子」。

 夢中になって本を探していたら、次第に目が疲れてきました。そんなときはひと休みして、庭に視線を移してみるのもいいでしょう。


縁側から見える景色がまたサイコー!


ドリンクも充実。店主さんが美味しい珈琲を淹れてくれます。


こちらの古書店さんは今年の春、あらたに出版社を立ち上げまして、その第1弾として2冊の詩集が発売されました。


店主さんの淹れてくれた珈琲を飲みながら、購入した詩集に目を通す――なんとも幸せなひととき。

 ただ古書を買いにくるだけじゃなく、様々な楽しみ方ができる庭文庫さん。
 このお店の魅力は、僕があれこれ下手な説明をするより、入口近くに貼られた2枚の案内書をお見せしたほうが、ずっと伝わりやすいと思うので、最後にそれらを貼りつけておきますね。


ちなみに、店主さんはイラストにそっくりなおかたでした。


店内に置かれたこちらのノートにも目を通してみてください。さらに楽しみかたが広がります。

 1日中ゆっくりできる癒しの空間。もっともっと長居したい! と感じるかたもきっと大勢いらっしゃると思います。
 そんなかたたちのために今後、宿泊スペースも準備中なのだとか。古民家の一番奥のスペースが泊まれるお部屋になるそうです。
 大自然と古書に囲まれながら大切な人とひと晩を過ごせるなんて、サイコーの贅沢じゃありませんか?
 宿がオープンしたら、ぜひまた訪れたいと思います。

《今回、お世話になった古書店さま》
 庭文庫
 火・水・木定休 10:00~17:00
 岐阜県恵那市笠置町河合1462-3
 http://niwabunko.com/
 最新情報はTwitterにて


《今月のくろけん》
 青鬼シリーズ最新刊『青鬼 沈黙の映画館(シアター)』(PHPジュニアノベル)が発売されました。ついに累計100万部突破です! 皆様のおかげ。どうもありがとうございます。

黒田研二

黒田研二(くろだ・けんじ)
作家。出版社勤務を経て、2000年『ウェディング・ドレス』(講談社)で第16回メフィスト賞を受賞してデビュー。主な著作は『今日を忘れた明日の僕へ』(原書房)、『カンニング少女』『キュート&ニート』(以上文藝春秋)など。近年は『逆転裁判』『逆転検事』のコミカライズ(講談社)、『真かまいたちの夜』のメインシナリオ、『青鬼』のノベライズ(PHP研究所)など、ゲーム関連の仕事が中心。得意なスポーツは水泳、スキー。好きなものは柴犬、アイドル。
Twitter:https://twitter.com/kuroken01

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