民俗学書買取事例『民衆史の遺産』谷川健一編集ほか

『民衆史の遺産』トップ画像

2012年より発行された民俗学関連の全集『民衆史の遺産』をお譲りいただきました。古書店三月兎之杜の買取をご利用いただきましてありがとうございます。

民俗学とは

『民衆史の遺産』3巻オビ

民俗学はある特定の国家や民族の、一般市民レベルでの風俗や週刊、伝説、民話、歌謡、生活用具などに至るまで収集、研究していく学問です。国家の歴史や位の高い人物に関する記録は書物などで残りますが、識字率の低い庶民レベルでは資料も残りにくいわけです。

民俗学、文化人類学の流れは、海外では18世紀末頃、日本では19世紀末頃に起こってきます。いずれも市民革命や近代化に伴う社会体制の急激な変化や都市化の流れの中で、民衆レベルの記録が失われていくことに気づいたわけですね。それあで当たり前にあったものを失くして初めてその重要性に気づくのは、なんとなく古書をはじめとする蒐集趣味に通じるものがありますね。

日本における民俗学は、1886年に坪井正五郎が立ち上げた東京人類学会にはじまるといわれています。続き20世紀初頭に農商務省官僚だった柳田國男が、宮崎県で取材した狩猟の記録「後狩詞記」によってその一歩を踏み出します。そして戦後には「日本民族学会」が発足。それまでの民俗学は柳田個人が自宅で主催する集まりなど氏個人に発する運動規模でしたが、学会発足後は大学などでの講座も開かれ、学問として一歩進んだ体勢が整うことになります。

民俗学は各地の集落単位で民間伝承や民俗資料、道具などの記録を聞き取り・時に残された文字資料を集めていくフィールドワークの蓄積が要となります。そうして得られた資料を類型化し比較していくことで、民族事象の出自や変遷を明らかにしていきます。

民衆史の遺産

『民衆史の遺産』1巻奥付

今回お譲りいただきました『民衆史の遺産』は2012年から2019年にかけて刊行された、民俗学関連著作の全集です。

各巻ごとのテーマにあわせた著作を収録。例えば第1巻「山の漂泊民 サンカ・マタギ・木地屋」ではかつてサンカ(山窩)などと呼ばれた、山間部を中心に狩猟採集などで生活する集団についての著作を集めています。近年では「山の民」など無難な表現になっていますが、戦後間もないあたりまでは「山奥に住むなんだかよくわからない連中」といった扱いでした。当然サンカたちも時に彼らと交流し時に対立する村落の人々も文字で記録を残すようなことは稀で、それゆえに近代化によって彼らが姿を消しかけていたタイミングでの取材は貴重なものといえるかもしれません。

第1巻ではサンカ関連柳田國男自身による「イタカ」「サンカ」をはじめ、荒井貢次郎「幻像の山窩」、宮本常一「サンカの終焉」ほか11作を収録。さらに秋田マタギ資料や、本全集の編集者である谷川健一と荒井貢次郎および礫川全次それぞれとの対談によるサンカ考なども収められています。

以降の巻も同様に「鬼」(2巻)「遊女」(3巻:上のオビ画像)「妖怪」(7巻)「憑きもの」(10巻)「アイヌ」(13巻)といったテーマごとにまとめられています。なお14巻は「沖縄」がテーマでした。

古書店三月兎之杜では各種民俗学関連書籍の買取をお待ちしております。どうぞお気軽にご連絡ください!

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