数学書買取事例『岡潔先生遺稿集』第一集~第七集

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数学の多変数函数論の研究における世界的な第一人者、岡潔。1901年に大阪に生まれ、1925年に京都帝国大学講師、1929年には同大学助教授となります。この時代の岡の講義をのちのノーベル賞学者、湯川秀樹や朝永振一郎らも受けており、(専門である)物理学よりも刺激的であったと語っています。

1929年より3年間フランスに留学し、この時多変数函数論を生涯の研究テーマと定めます。以後二十年をかけて夜昼なく研究生活に没頭、その理論の骨格を一人で完成させます。この研究の過程で当時未解決であったハルトークスの逆問題を解決し、世界中の数学者の注目を集めました。このほかにもクザンの第2問題という難問の解決に関する「岡の原理」なども発表しています。

研究者であると同時に教育者としても優れ、先述のように湯川博士らから高い評価を受けています。日本人の発想・思考については、西洋的インスピレーションよりも東洋的な情操や情緒を大切にすべきと提唱しています。数学以外の随筆でも『春宵十話』などの作品を残し、歴史においても神代から敗戦に至るまでを体系づけた日本人観を持ち、そうした歴史観に基づく教育論を展開しました。

それらの考え方は敗戦後の日本人のアイデンティティ形成にも影響したのではないでしょうか。ラジオやテレビ番組にも出演する機会が多かったようで、晩年の肉声のアーカイブなども残っています。芭蕉や万葉集の和歌なども引き合いに出し、西洋人にとっての自然が自分の外に対立するものとしてあるのに対し、日本人が内なる自然として捉えていることを語ります。

そうした日本人と自然の在り方から、岡自身の心のうちにある数学との向き合い方に繋がっていたと述べています。その音声ではこうした情操的な研究のあり方が当時(昭和30年代)の日本では足りなくなっているという意見でしたが、現在ではよりその希薄さが痛感できるかもしれません。ちょっとコスパだのタイパだの、合理的でありすぎることは果たして研究を突き詰めることにプラスになるんでしょうかね(個人の意見です)。

氏は生前に数学に関する十の論文と一つのノートを発表していますが、それ以外にも多くの未発表作品をノートにとどめていました。今回お譲りいただいた「岡潔先生遺稿集」は、氏の未発表の作品を弟子筋にあたる方々がまとめ、清書した肉筆出版物です。

序文を書いている西野利雄は90年代に「多変数函数論」という岡潔の功績に関する著作を発表しています。岡の死の直後、未発表論文の重要性に目をつけ、肉筆というかたちでまずまとめたその意義は、もしかしたらこれからの未来における発見にもかかわっていくのかもしれません。

古書店三月兎之杜では、数学書に限らずあらゆる分野の学術書に注目しています。ご家族が買った「なんだか難しい本」の買取のご相談をお待ちしています!

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