1984年から1991年にかけて週一(後に月2回2冊ずつ)刊行された、中央公論社(現:中央公論新社)の『藤子不二雄ランド(以下FFランド)』。全301冊揃という膨大な一大刊行物であり、今では個別に揃えることもかなり困難になった本セットを、全巻揃いにてお譲りいただきました、本当にありがとうございます!!
この一大事業ともいえる刊行物を、リアルタイムでも後年でも集めきり、全てセル画が付いたとてもきれいな状態でコレクションをされていたお客様に頭が下がります。
この物量ですので、今回お客様へお見積りをさせていただいた後、ご自宅まで伺う出張買取をさせていただきました。
1980年代前半の藤子不二雄ブームの盛り上がりはすさまじいものがありました。1979年の『ドラえもん』の再アニメ化にはじまり、80年の『怪物くん』、81年の『忍者ハットリくん』、83年に『パーマン』、そして84年から刊行された「FFランド」のアニメーション動画を使ったCMがこの時期放送中の藤子作品で流れ始めます。
85年には『オバケのQ太郎』『プロゴルファー猿』、87年『エスパー魔美』『ウルトラB』、88年『キテレツ大百科』『ビリ犬』、89年『パラソルへんべえ』『笑ゥせぇるすまん』『チンプイ』と、ほぼ毎年何らかの新作アニメがスタートする勢いでした。
この流れをたった二人の作家が生み出していたというのは、こうして振り返っても驚くしかありません。
ちなみに『ウルトラB』と『チンプイ』はこの「FFランド」の描き下ろし連載作品からのアニメ化です。「藤子不二雄ランド」は単行本であると同時に定期刊行物として、掲載マンガの解説や読者コーナー、そして新作マンガ(後に再録作も)の連載も行われていました。このへんは現在のパートワークに近いかもしれませんね。
収録作品はあくまで子供向けというコンセプトのため、青年誌に載った作品はほとんど収録されておりません。それでもこの多数かつ多彩な作品群には驚かずにはおれませんね。
つい先日(記事執筆時2023年10月)もこのFFランドにも収録されている『T・Pぼん』のアニメ化が発表されました。藤子・F・不二雄先生原作によるタイムパラドックスを絡めた歴史SF作品で、1989年のテレビ特番に続いて2度目のアニメ化となります。
ひょんなことからタイムパトロール隊員になった主人公が、歴史の谷間で不幸な死を遂げた人々を救助する作品です。しかしタイムパトロールといえども同一地点への繰り返しの干渉はできないなどのほか、いくつかの制限が設けられています。
現在では時間系SFはリセットや平行世界論によってかなりお手軽に過去改変ができてしまっていますが、こうした原則一発勝負のルールの中での選択や決断が迫られる、ビターな作劇に注目してほしいですね。
藤子不二雄作品は2000年代に入って「藤子不二雄Ⓐランド」と「藤子・F・不二雄大全集」に分かれて刊行されています。しかし二人一組で歩んだ時代の集大成ともなった「藤子不二雄ランド」全301巻が放つ輝きは、衰えるどころか今なお二度と戻らないあの時代を照らしていると感じます。いかん70年生まれには涙が……。
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