
「叢書(そうしょ)」という言葉を、図書館の棚や本の奥付で目にしたことはあるでしょうか?
本記事では、「叢書」の辞書的な意味から、出版・図書館実務での使われ方、全集・双書・新書・文庫本などの類似語との違いまで解説します。
【この記事でわかること】
- 叢書の読み方と定義
- 辞書的な意味と、出版・図書館での実務的な意味の違い
- 叢書・双書・全集・文庫・新書・単行本の比較一覧
- 漢籍(かんせき)との関係と歴史的背景(百川学海など)
- 図書館・書店で叢書を正しく探す方法
目次
叢書の読み方と基本の意味

叢書の読み方は「そうしょ」です。
「叢」という漢字は「むら」とも読み、「草木が群がり茂る」状態を表すことから、転じて「多くのものをひとまとめにする」意味で使われるようになりました。
国語辞典(デジタル大辞泉)では、叢書に次の2つの意味が示されています。
| 意味① | 同じ種類・分野の事柄を、一定の形式に従って編集・刊行した一連の書物(シリーズ) 例:歴史物語叢書 |
| 意味② | 多くの書物を集大成したもの。「四庫全書」「群書類従」などの漢籍(かんせき)的な集成 |
出版・図書館の実務では意味①の「シリーズとしての叢書」が中心です。
研究文脈や漢籍の分類では、意味②として使うことが増えます。
双書(そうしょ)とは何が違うのか

叢書と双書はどのように違うのでしょうか?
実は「双書(そうしょ)」は叢書の代用表記で、読み方・意味は「叢書」とまったく同じです。
同じ種類・分野の書物を一定形式でまとめて刊行するシリーズを指し、「有斐閣双書」のように書名に使われる例もあります。
広辞苑(第三版)でも、双書を叢書の誤りとは扱っていません。
ただし、語義の本来の正字は「叢書」であるため、一般的な説明では叢書の表記が標準です。
叢書・全集・双書・シリーズ・文庫・新書・単行本の違い

似た言葉が多く混乱しやすいため、以下の表に整理しました。
| 用語 | 読み方 | 主な特徴 | 図書館・書店での扱い |
| 叢書 (双書) | そうしょ | 特定テーマ・方針で複数冊を一定形式で継続刊行するシリーズ。 叢書名と巻次で管理。 | 書籍(ISBN)として流通。 OPACで叢書名検索が可能。 |
| 全集 | ぜんしゅう | 特定の著者や作品群を網羅的に収録。 完結巻数があらかじめ決まることが多い。 | 書籍として流通。 巻数が明示されることが多い。 |
| 文庫 (文庫本) | ぶんこ | B6より小さい小型判型の叢書。 広義には叢書の一種。安価で携帯しやすい。 | 書籍として流通。 文庫棚で配架。 |
| 新書 | しんしょ | 文庫より少し大きい縦長判型の叢書。 教養・時事・学術の入門書が中心。 | 書籍として流通。 新書棚で配架。 |
| 単行本 | たんこうぼん | ①雑誌以外の書籍全般、②叢書に属さない単独刊行の本という2つの意味がある。 | 書籍として流通。 「単行本=叢書でない本」の意味で使われることがある。 |
| 雑誌・ムック | ざっし・むっく | 定期刊行の逐次刊行物。 ムックは見た目が本に近いが雑誌コードで流通する場合がある。 | 雑誌(ISSN)として流通。 雑誌棚で配架。書籍とは別管理。 |
文庫や新書は叢書の一形態です。
しかし日本の出版慣例では判型ごとに「文庫」「新書」と呼び分けるため、それ以外のシリーズをまとめて叢書と呼ぶこともあります。
叢書の成立条件:何が「叢書らしさ」を決めるのか
叢書らしさを決めるのは冊数の多さではなく、次の2点が揃っているかどうかです。
- 共通の編集方針・テーマ
- 叢書名(シリーズ名)と巻次による管理
①共通の編集方針・テーマ

叢書は、「入門から研究の足場を作る」「古典を現代の読者向けに読み直す」といった共通の編集方針・テーマや目的が設定されています。
内容の難易度・分量・注釈の付け方・装丁・判型まで統一されるため、読者は「次も同じ読み心地」という感覚で、期待して次巻を楽しみにできるのが叢書の醍醐味です。
②叢書名(シリーズ名)と巻次による管理

叢書には、各冊の固有タイトルとは別に、シリーズ全体を指す叢書名が付与されます。
「第1巻・第2巻」や通巻番号など巻次も設定されるため、図書館OPACで叢書名検索すれば既刊一覧が取得可能です。
ただし、表紙のタイトルだけを見ていると所属シリーズが判別できない場合があるため、奥付の叢書名・巻次を必ず確認してください。
叢書名の表記は多様です。
「○○ブックス」「○○ライブラリー」「○○講座」「○○テキスト」など名称に「叢書」という文字が入らなくとも、叢書名と巻次が一貫して付与されていれば叢書に分類されます。
代表的な叢書の具体例

ここでは、叢書とはどのような作品が当てはまるのか、代表的な叢書の例について日本・中国・海外それぞれについて見ていきます。
叢書の例
日本での叢書の代表例は、以下のようなものがあります。
| 叢書名 | 出版社 | 特徴 |
| 岩波数学叢書 | 岩波書店 | 学部4年〜大学院修士課程レベルの数学書シリーズ。 |
| 有斐閣双書 | 有斐閣 | 法学・経済学分野の入門〜中級向け学術シリーズ。 「双書」表記の代表例。 |
| 群書類従(ぐんしょるいじゅう) | (江戸時代刊) | 塙保己一が編んだ日本の古典文献集成。 意味②(集成としての叢書)の代表例。 |
漢籍(かんせき)の叢書例

中国人によって著述・編纂された漢文の図書「漢籍」は、叢書の代表です。
現存する印刷された最古の漢籍叢書は、1273年(南宋末)に刊行された左圭編の『百川学海(ひゃくせんがっかい)』で、100種177巻から成り、唐・宋の書物を収録しています。
印刷されたことで広く普及し、後世の叢書編纂の手本とされました。
明から清にかけて叢書の編纂が盛んになり、最大のものが『四庫全書』です。
叢書という言葉は唐末の陸亀蒙『笠沢叢書』で初めて用いられましたが、これは詩文集であり、後世の「シリーズ叢書」とはまた違うものになります。
海外の叢書例

海外では叢書に相当するものが「Library」「Classics」「Series」などの語で表現されます。
ドイツのレクラム文庫(Reclam)やイギリスのエヴェリマン叢書(Everyman’s Library)が代表例で、日本語では「叢書」または「文庫」と訳されることがあります。
図書館・書店で叢書を正しく探す方法

図書館や書店ではたくさんの書物が並んでおり、その中で叢書を見つけるのが難しく感じることもあります。
陳列する本の中で叢書の探し方ポイントについて、以下にまとめました。
図書館OPACでの探し方

図書館OPACは蔵書目録を検索するのに最適なオンラインシステムです。
叢書を探す際にはぜひ、図書館OPACを活用しましょう。
その際にスムーズに検索するためのポイントは以下になります。
- タイトル検索ではなく「叢書名(シリーズ名)」で検索する。
- 検索結果の詳細表示に「叢書名」「巻次」「通巻」項目が出たら、そこを起点に一覧を取得できる。
- 所蔵の抜け(未所蔵巻)の確認も叢書名検索で効率化できる。
出版社サイトでの探し方

出版社は叢書の公式管理者でもあり、叢書を探す際には出版社サイトを利用することで非常に正確に情報を得ることができます。
出版社サイトを使うにあたってのポイントをまとめました。
- 叢書ページには「既刊一覧」「近刊」「品切れ・重版未定」「電子版の有無」が掲載されている。
- 購入・入手性の確認は出版社サイトが最も正確な一次情報源となる。
検索時の注意点

叢書を検索する際の注意点として、書物の表紙タイトルだけでは叢書に所属するかどうか判別が難しいものもあるため、奥付の叢書名・巻次を確認するようにしましょう。
洋書に関しては原語で検索するとカタカナ表記のミスが減り、ヒット率が上がります。
休刊・廃刊・改題後も本自体は図書館に所蔵され続けるため、叢書が終了してしまっても入手不可ではありません。
まとめ

今回は、叢書についての概要や意味、「双書」との違いなどを詳しくご紹介しました。
結論として、叢書とは、同じ種類・分野の書物を一定の編集方針・形式に従って刊行するシリーズのことで、双書と書くこともありほぼ同じ意味になります。
| 読み方 | そうしょ(双書とも書く) |
| 意味①(主な用法) | 同一方針・形式で継続刊行される一連の書物(シリーズ) |
| 意味②(漢籍・資料的用法) | 多くの書物を集大成したもの(百川学海・四庫全書など) |
| 全集との違い | 全集は特定著者・作品を網羅するが、叢書はテーマ・方針で選書するシリーズ |
| 文庫・新書との関係 | 文庫・新書は叢書の一形態(判型で呼び分けられた叢書) |
| 単行本との違い | 単行本は叢書に属さない単独刊行の本(広義では雑誌以外の書籍全般) |
図書館や書店で「叢書」と表示された棚は、同じ編集方針でまとめられたシリーズ本の棚です。
叢書名を手がかりに検索すれば、シリーズ全体を一覧で把握でき、目的の本を最短で見つけられます。
【参考資料・出典】
goo国語辞書(デジタル大辞泉)、Wikipedia「叢書」「叢書(漢籍)」「百川学海」、コトバンク、Weblio辞書、書籍づくり本舗
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