ホットドッグプレスとは
ホットドッグプレス(Hot Dog Press)は、1979年に講談社から創刊された男性向け情報誌です。
1970年代前半に起きたオイルショックは、高度経済成長期にブレーキをかけました。しかしそれは必ずしもネガティブな要素だけではなく、多忙の時代がひと段落したことも意味していました。
70年代後半には、余暇・余裕の時代への移行が起こります。ホットドッグプレスに先行した『ポパイ』(平凡出版=現マガジンハウス)は、そんな1976年に創刊されています。その3年後に、ホットドッグプレスが創刊します。いわゆる「デートマニュアル」が乱立する時代の幕開けです。
「マニュアル」が普及した時代

あくまで1970年生まれの個人的な印象ですが、この時期「マニュアル」というワードはちょっと特別なニュアンスがありました。例えば1971年に日本展開を開始したマクドナルドでは、スタッフ向けに詳細なオペレーションマニュアルが用意されていますよね。この頃、そうしたマニュアルが「存在すること」自体が、何かと話題になっていたのを覚えています。
例えば「マニュアルなんて画一的になってけしからん」みたいな言説もありました。しかし製造やサービス業は安定を迎え、口伝の時代からマニュアルの時代へと移行するタイミングだったのだと思います。
「性」を扱う特集が人気

なお、ホットドッグプレスを含む「マニュアル系情報誌」で人気の号は、やはり「性」に関する特集号だったようですね(男女向けを問わず)。定期的にその特集が組まれると、売り上げがぐんと伸びたようです。

私自身は購読はしていなかったのですが、学生時代に通っていた床屋にあったので『ホットドッグプレス』を拾い読むこともありました。基本的にオタク体質なのでガジェット関連しか読んでいなかったです。ファッション関連は全然頭に入ってきませんでしたが、今になってもう少しマジメにその辺も読んでおけばよかったなと少し思いますね。なお、さすがにセックス特集はお店で避けていたみたいです。
さて、以下からは弊店で過去にお取扱した号の写真とともに、ホットドッグプレスの歴史を追っていきます。
ホットドッグプレス創刊号~第3号(1979年7月号~9月号)
創刊号

まずは創刊号の目次をちょっと追ってみましょう。
正直、3列に分割された目次の一番左はよく解りません。エキセントリックな見出しで興味を惹く「つかみ」的なネタの羅列感が強いですね。
51ページからの「学生驚愕大新聞」はキャンパスライフに関する記事が集中しており、雑誌のターゲットが大学生であることが示されています。50ccバイクやターボに関する基礎知識なども、二輪・四輪のエントリーユーザーを意識していることがわかります。ちなみに国産車初の市販ターボ車は、この年の12月発売の日産セドリック/グロリアでした。
ファッションについての明確な記事はポロシャツ再考くらいですね。宇宙考古学記事は唐突な印象がありますが、70年代オカルトブームの残滓と考えれば「抑え」なのだと思います。
第2号/第3号
続く第2号はマリンスポーツなど「夏」に焦点を当てた内容です。沖縄・八重山諸島方面への冒険旅行への提案が主軸でしょうか。その他夏のレジャー紹介が多数、30の提案の中にある「川流れ」はラフティングのことでしょうか、この時代としてはまだ珍しかったと思います。
第3号は「ロック」をテーマとするなど特集スタイルで統一感を感じる構成内容です。同時に間近に迫る秋を意識してジャケットや秋物の記事を掲載するなど、ファッション要素もシームレスに盛り込まれるようになりました。
1980年代
そして創刊間もなく80年代に突入。この時期はパターン破りや楽屋オチなど世の中を斜めに見るような時代だったと思います。雑誌やテレビの広告でも、従来のスタンダードな枠からはみ出たものが話題となることが多くなりました。こうした広告媒体の影響の拡大を受けて、流行の創出に代理店が深く関わるようになっていきます。
当然雑誌記事においても、スポンサーの意向を汲んだものが多くなっていきます。「この秋の流行は●●」とか言いつつ、実際には●●を流行らせましょうという動きですね。
もちろん悪いことばかりでもなく、みんなであえてそうした情報に踊り踊らされることで特定の商品の売り上げが伸び、さらにそこに便乗したメーカーや周辺アイテムも良い結果をもたらすようになっていきます。

でも大学生や社会人なり立てくらいの若い人にダブル・ブレストやスリーピースをススメるあたりは単にバブルっぽいなと思ってしまいます。
そしてこれは70年代以前からですが、やはり旬のタレントやアイドルの起用も重要でした。ただ、特に80年代はアイドルブームの影響もあり、女性アイドルの売り上げへの影響も多かったようですね。こちらに挙げた松田聖子、斉藤由貴、富田靖子、中森明菜は多くのCMに出演していました。
実際70年代から80年代のCM・広告が火をつけたヒットアイテムは枚挙に暇がありません。もちろん偶然のヒット作もありますが、多くがCMの集中投入と雑誌記事・広告との連動による計算されたヒットでした。これらの時代の雰囲気がバブル景気を生む流れになったのではないでしょうか。
1990年代
しかしやがてバブルは崩壊、Wndows95発表以降はインターネット時代の到来によって、ヒット作が生まれる構造に変化が訪れます。
企業がホームページで直接情報を発進するようになっただけでなく、素人でも情報の発信が可能となったことで、紙媒体のメディアは大幅にその影響力を失っていきました。
この時期に本誌の表紙やグラビアを飾ったアイドルも30年近い時間が経過しました。外観が変わった人変わらない人、外観は変わらないのにイメージが大きく変わった人とか色々いますね。
▼弊店で100冊まとめてお譲りいただいたときの記事
2000年代~現在

最終的に雑誌としてのホットドッグプレスは00年代に休刊。その後何度かウェブ媒体などで復活したりした末に、現在では電子書籍アプリなどでの定額読み放題対象として週刊で刊行されています。
だいたい2号に1回は性関連特集、残りはガジェット特集となっており、それらに過去のエッセイなどの再録で構成されているようです。
最新号No.604では北方謙三氏の『試みの地平線』第5回の前半部が収録されているとのこと。いやコマ切れにしなくてもそれなりに長期連載だったのでストックはありそうな印象ですが。
何度も擦られたネタですが、伝説となった「ソープに行け」が出てくるのはいつになるやら……(調べると初出は16年の連載期間の3年目頃のようでした)。
ホットドッグプレスに限らず、こうした青春期のカルチャー誌・情報誌は、時代の空気そのものを閉じ込めた資料でもあります。
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